空間の劇性ーアーキタイプとしての円形劇場

 紀元前3世紀に建設されたタオルミーナの円形劇場。私が訪れたヨーロッパの空間の中で最も感動したもののひとつ。地中海の光と廃墟の影、海のコントラストが強烈だった。晴れた日に観れたのが良かった。


一時期、イタリアやスペインで円形劇場(アンフィシアター)ばかり見て回っていた時がある。私は、高低差のある円弧に抱かれた、その強い空間の劇性に惹かれていた。どの空間も素晴らしかったが、とくに感動したのはシチリア、タオルミーナの円形劇場、半円の客席と、舞台であった崩れたプロセニアムの廃墟の背後に地中海の海が広がり、まるで映画のセットのようだった。ここでは演劇祭の一環として、毎年オペラが上演されるそうで、是非観てみたかった。

円形劇場は日本にはもともとないアーキタイプで、私はその原型をヨーロッパで体験することで、日本では体験できなかった空間のイメージをつかみ、その劇性のとりことなった。

円形劇場は、古代ローマの支配のためのシステムの一つで、パンとサーカスとして、広大な帝国の支配を支えるテクノロジーだった。シチリアで、ギリシャで、スペインで見た円形劇場は、いずれも古代ローマ時代からの廃墟であっても、同じ骨格を持っていた。

視線が一箇所に集中するその強力な空間構成は、ヨーロッパの見世物や演劇感のルーツになっている。それは、花道や桟敷という客席と舞台の関係、日本の劇場の空間構成とは全く違い、日本の演劇とヨーロッパの演劇の考え方の違いにもつながっている。


東京オペラシティの中庭に、数多くのスタディの結果、最後円形劇場を埋め込むことになった。この模型を作ったとき、空間の見え方が一変し感動した覚えがある。
ガレリアの大階段は、劇場都市 階段都市がテーマだった。
円形劇場は、劇場都市をテーマにした東京オペラシティの最後のピースだった。


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