隅田公園にて、、、

打ち合わせの帰りに隅田公園に寄った。錦糸公園などと並び、ここも関東大震災の復興計画の中で、後藤新平の計画した公園のひとつ。700本の桜は8代将軍吉宗公の植えたものがルーツとなっており、川を活かした親水公園は江戸から東京へ引き継がれた。公園上を通る首都高速は、この時代に整備された隅田川の緑のネットワークがなければ成立しなかった。パリやロンドンをモデルとした親水公園が、都市のバッファーゾーンとして、新しい交通システムのためのスペースとして機能したのである。さて、今度のオリンピックに向けて、東京の都市計画はどうなっているのかと、今よりはるかに先を見据えていた後藤新平の先見性に思いを馳せながら桜を見る。


完成直後の隅田公園の絵葉書。首都高速がなければどんなに素晴らしい景観か。これから自動運転など交通革命が起こる、その時にもう一度首都高速のあり方を考える時代が来るでしょう。

東京オペラシティ〜ガレリアの思い出

私が竹中工務店時代に設計チームに参加した東京オペラシティのガレリア。


建築における光の扱いについて、私が関わったまた別のプロジェクトを通して考えてみる。これは東京オペラシティのガレリア、東京でも最大スケールの半屋内街路、長さはミラノのガレリアと同じ200メートル越え。光と陰をテーマにNTTファシリティーズと都市計画研究所、そして昨年お亡くなりになったTAKの栁澤孝彦がデザインした。

トップライトはさまざまな形状、案を検討したが、栁澤さんの決めの意見でコマ返しのデザインに、これは強力だった。影が落ちて建物の表情を変えていく。大きな空間にふさわしいインパクトのあるデザインだった。

階段はいくつも案を検討し、結局シンプルでフラットな階段に。イタリアローマのカンピドリオ広場へ向かう階段の勾配、蹴上、踏面を参考にしている。登りやすいという人と登りにくいという人がいて面白い。身体感覚を揺さぶることを意識した。石はイサムノグチとずっと協働していた四国庵治の和泉石材による。リーダーの和泉正俊さんは当時もう70過ぎておられましたが、その佇まいは石の職人さんというよりは最早アーティスト、積むのは意外と早く、これだけの面積でも1ヶ月かかっていなかった。

壁には山口勝広のサウンドアート、床には当時まだまだ若手だった宮島達男のアートが仕込まれている。両者、オペラシティの設計室にたまに打ち合わせに来られていた。

反復するトップライトは、実は建物の設備負荷を減らすのにも役立っており、当時の設備設計課長が、全面ガラス張りよりだいぶ空間の負荷が減ったと喜んでいたのを思い出す。

もうひとつトップライト

二子玉川に建つ、Stream Tamagawaのトップライト


Stream Tamagawa、この商業施設には、建物の中を小径が貫通しており、それに沿って階段が建物に沿って屋根まで登っている。
階段の上にかかるトップライトを壁から離し、奥に向かって広がるようなデザインにした。私の敬愛する建築家、アルヴァロ シザがよくやるような、パースを強調した、人を呼び込む斜線による操作である。隙間の空間をどう魅せるか、写真では映りにくいが、模型を使ってよく検討した。人はどうしたって登ろうとすれば階段を見上げるので、トップライトは人を上へと意識させる有効な装置である。この隙間の空間は半屋内を強調したかったので、仕上げ材は外でも使っているレンガタイルを巻き込んでいる。こちらは半屋外空間で風も抜けることもあり、直射日光はフィルムを貼りカットすることで留めた。屋内空間だったら熱負荷を考慮し、直射日光そのまま入る形とはしなかっただろう。

たまに建物に行ったときに観察していると、階段を登ってくれる人も多く、こちらの意図通りに人が無意識に動いてもらえるのは嬉しいことです。


トップライトからの光がアートを照らしている。竹中工務店時代から手がけてきた自然光の活用による、ミュージアムの設計のノウハウを生かしている。下がり壁にはピンスポット、夜アートを照らす。光の操作で人の行動を喚起する。


こちらはアルヴァロ・シザのポルトの現代美術館エントランス。シザはものの配置が強烈で、少しズラしたりパースを強調するだけで空間を一変させてしまう。実物を観て、このエントランスもすごく意識的な空間操作があって、ちょっとした操作なのにその見え方は他の建物と全く違うという、すごい体験をさせて頂きました。建物のグリッドを少しだけズラして実現したこの空の切り取り方!

トップライト3題

建築家が好きな造形言語にトップライトがある。自然光をいかに生かすかが建築家にとっての大きなテーマである。ここではトップライトの中でもハイサイドライトと呼ばれるものを三つ紹介する。


こちらはかつて見たバルセロナのミロ美術館 。槙文彦の師匠でもある、スペインの建築家ホセ・ルイ・セルト設計、柔らかいウォールト屋根から光が差し込む。スペインの強烈な日差しを直接ではなく、ハイサイドライトから入れて、バウンドさせて取り込むところがポイント。自然光で見るアートは目に優しい。ホセ・ルイ・セルトはこの建築言語を他のプロジェクトでも多用している。


こちらはかつて設計チームに参加した東京オペラシティアートギャラリーの断面。同じく、ハイサイドライトから光を入れて、上と同じような形状のウォールト屋根にバウンドさせ、光を取り込む。自然光で美術品を見せることをテーマとしたけれど、美術品の保護の問題もあり、光のコントロールは難しい。ギャラリーの設計者、栁澤孝彦はいくつも美術館を設計しているが、いずれも自然光を取り入れる設計になっている。50分の1模型を作って、同じ向きで現場に模型を置いて太陽光がどう入るかテストしましたね。模型製作の桧森さん。


さて最近話題に上げている私たちの設計した水彩館のトップライト、介護を受けている方々はなかなか表にも出られないので、なるべく自然を感じるようにという配慮から、天井からの自然光というアイディアになった。平屋だから成立した構成である。トップライトの下は高齢者が集うコモンスペースであり、屋内だけど屋外のような、中庭的なスペースでもある。部屋の配置も凹凸をつけ変化をつけている。やはりハイサイドライトの向きは難しく、かなり検討したが、最終的には秋口に入る自然光のためブラインドをつけた。

光の扱いは難しいが、計算通りの結果になった時は大きな喜びでもある。光をめぐる思考は、これからも続けて行きたい。