素人でもわかるブロック塀の危険性判断

「子ども世代に渡せるRCの家づくり」のページに、今回の震災で問題になった「素人でもわかるブロック塀の危険性判断」について書いています。住宅やビル本体の耐震診断と違い、ある程度の見当は素人でもつくので、参考まで、問題ありそうであれば、専門家にご相談下さい。

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コンバージョンの好例/目黒区役所

1階回廊から水盤のある中庭を見る。

とある案件の現地調査があり、その足で必要もあって目黒区役所を訪れた。民間施設を公共施設にコンバージョン(用途変更による転用と併せた改修)した好例である。

この建物はもともと千代田生命保険本社ビルだった建物で、設計は村野藤吾による(1966年竣工)。1969年にBCS賞なども受賞し、東京にある彼の作品の中でも代表作といっていい建築だった。1990年代末の金融危機が引き金となり、2000年10月に千代田生命保険が更生特例法の適用を申請し破綻した。それに伴い、管財人が目黒区に本社売却を打診、ちょうど区役所が手狭になり建て替えも含め検討していた区が買い取り、大規模改修とあわせて区役所にコンバージョンした。

千代田生命保険ビルが区役所にコンバージョンされたと聞いて本当に驚いたものである。そして実際に使われているところを見に行って、さらに感動した。その気持ちはこの役所に訪れるたびに深まっている。まずは外部からみてみよう。

街中から建物を見る、繊細なアルミキャストの外装、低層の住宅や店舗が立ち並ぶ周辺環境にあわせ、外観を分節しスケールを感じさせないようなデザインを村野が心がけたことがよくわかる。

水盤のある中庭、アルミキャストの外装がこれでもかと使われ、外観にリズムをもたらしている。

側廊を見る。床からヌルっとタイルが立ち上がり窓面へ、このあたりは村野独特のディテール。足元の処理が本当にいつも面白い。

水盤に突き出す茶室、このあたりもなかなか見られるものではなかった。それが区役所となり市民に開放され、いつでも見ることができる。これはプライベート(民間企業)が所有していた文化的価値を、市民に(思いもよらず)開放したといえるだろう。

こちらもエントランス正面にある階段。自由曲線の連なる階段は村野の得意技。支柱の繊細なデザインも素晴らしい。写真でしかみたことなかったものが、いつでも見られて市民に使われている。このありかたに感動する。

エントランスホール、おそらく今の設計だったらこんな贅沢な空間の使い方はできなかっただろう、良い時代の建築だった。(公共施設として元々計画されたら、こんな空間はいらないとつるし上げを食っていたに違いない、民間施設→公共施設だからこそ成立している)

トップライトも村野らしいデザイン。(日生劇場の天井など思い出しますなあ)

コンバージョンを計画したのは安井建築設計事務所。事務所のHPにあるレポートを読むと細心の注意をはらって元のデザインを極力生かし区役所に改修したことがうかがわれる。改修工事に携わる設計事務所として良い仕事でした。

また、もともと千代田生命保険自体が、地域密着を当初から目指し、茶室の開放や、中庭を地元のお祭りに貸すなど、もともと地域に親しまれるような会社だったことも、公共機関への転用をスムーズに移行させた原因の一つといえる。

このコンバージョンは、目黒区役所にとっても、東京にとっても、良い文化遺産を手に入れたといってもいいのではないか。この建物を訪れるたびにそう考える。これからはストックをどう再利用していくかが問われる時代である。私もいくつかコンバージョンを手掛けているが、これから時代にあわせ、もっともっとこういう用途変更に力を入れて行きたい、そう思える場でした。


当事務所のコンバージョン例

Fleuve Tamagawa

場所は二子玉川(今話題の施設二子玉川RIZEのまん前)、倉庫を商業施設にコンバージョンした例。

ライステクノロジーかわち米ゲル工場

地方創生を目的とした新しい産業創出を目指し、閉鎖後10年間放置されていた給食センターを最新の食品工場に蘇らせた例。