コミュニティについて考える必要のあるプロジェクトが重なってい
映画はジェイン・ジェイコブスの生涯をたどりながら、ニューヨークでの市民運動を中心に、NY都市開発のディレクター、ロバート・モーゼスとの戦いを中心に描いています。彼女の活躍した1950年代から60年代のアメリカは、近代建築の隆盛期で、アメリカ中でモダニズムの考え方に基づく高層住宅が建てられました。これらは理想的な住みかとして喧伝されましたが、建ったその時から広いオープンスペースには人がおらず、コミュニティが消失し、賑わいのない場がどんどんつくられているような状況でした。ジェインの住むNYも、ロバート・モーゼスの押し進めるモダニズム都市計画により、賑わいのある古いマンハッタンの下町が破壊されようとしていました。彼女はそれにNOと叫び、市民の手による街路の復権を唱えたのです。
映画は彼女とその仲間の母親を中心とした市民たちとモーゼスとの戦いを、歴史的背景も含め、当時のモノクロ映像や本人の録音インタビュー、ラジオの声などをベースにじっくりと描いていきます。文章で読んでいたものが映像や音になっていて、やはり映画の持つ力を感じます。公聴会のシーンなど、当時のモノクロ写真と録音された声のモンタージュだけなのですが、現実に起こっていた内容のため、異様な迫力がありました。実際、ここでのジェインの挑発の結果、彼女は逮捕されてしまうのです。
また、映像的にインパクトがあるのは、スラムとなり使い物にならなくなった高層集合住宅の爆破シーン、全米各地にある高層住宅が90年代の後半に次々と爆破されていく姿がモンタージュされます。それは街路を無視し、オープンスペースと自動車を優先した場の敗北でした。
その他、高層ビルの模型を倒して、低層の群とし、
ジェインの活動と著作は、アメリカの都市計画に想像以上の影響を与えました。1960年代末のカウンターカルチャー、近代の見直しの潮流と、ベトナム戦争の社会的背景とも相まって、旧来の街路や、古い建物、コミュニティの再生に注目が集まったのです。これらが、近年の都市計画の考え方のベースになっていることは間違いないのです。
まちづくりやコミュニティに興味のある方は必見の映画だと思います。後、建築を学んでいる学生だけでなく、社会科学などを専攻している方も是非。澁谷ユーロスペースにて、4月28日から。