書評「世界一わかりやすい発酵ソムリエ・マニュアル」

今回も書評とイベントについての記事です。
今回の記事は、先日出席した発酵についてのイベントで、頂いた本「発酵ソムリエ」の短評など。

この会は、私が関わっている米ゲル(ライスジュレ)についてのプロジェクトで協働しているアグリクリエイトの斎藤会から、発酵についての面白いイベントがあるので参加しませんか?とのご紹介がきっかけでした。(発酵イベントだからビールがたくさん飲めるよ、って言うのが殺し文句でしたが(^_^)。


会の様子、女性が多く参加。やはり発酵には興味があるのですね。


「発酵」と「建築」、どこに関係があるんだ、と言われるかもしれませんが、建築家として地方創生やまちづくりを手がけていると、特に小さな自治体など、結局そのまちを表す最大の特徴が食であることが多く、さまざまなプロジェクトを手がけてきた結果として、地域の活性化に食や農は切っても切れないことがよくわかりました。

千葉県の道の駅で発酵をテーマにした場所があり、お客様を集めています(「発酵の里こうざき」)。良いテーマだなと感心していました。味噌や醤油、日本酒をはじめとして、和食の中で、発酵は一大テーマで、地域で生かせる資源がたくさんあります。また、最近進めている高齢者関係のプロジェクトの中でも、健康維持、予防医療という意味で、発酵食品による効果が期待できます。

本の内容は、発酵の歴史から、発酵食品の分類、発酵のための菌についての話なと、発酵についてのベーシックな知識がわかりやすく述べられています
著者の松本裕子さんは一般社団法人日本インバウンド・アテンダント協会の代表理事で、発酵についての普及啓発を協会の柱の1つとして位置付け、発酵ソムリエ資格認定なども行っています。大阪市が万博に立候補しようとしていますが、そのテーマ「 健康と長寿」など、日本がこれから海外のお客様を迎えるにあたって、「 健康と長寿」と、それを形づくるベースのひとつとなる「発酵」は、より大きなテーマとなってくるでしょう。

会では、わかりやすい発酵の例として、大麦をベースにしたビールと、小麦をベースにしたビールが出されました。飲み比べると小麦をベースにしたビールは少しメロンのような甘い味がして、こんなに味が違うのかと、百聞は一見にしかず、いや、一飲にしかず、ということがよくわかりました。


会は発酵つながりということで浅草のアサヒビール本社に併設されたビアレストラン「フラムドール」で行われました。上記の2種のビールもアサヒビールで醸造されたものです。この建物及びインテリアは、バブル華やかなりし頃、フランス人建築家、フィリップ スタルクによって設計されたものです。今でも考えられないような斬新なデザインで、The Wallや、イル パラッツォなどと並び、日本に建った外国人建築家による記念碑的な建物のひとつです。久しぶりに訪れましたが、インテリアがそのまま残されていて安心しました。あの人の足のような柱のデザインなど、なかなか他ではお目にかかれないものです。それらのオーガニックなデザインは、今回の発酵をテーマにした会にも、とても合っていたと思います。ただし、残念ながらトイレは改修されていました。あまりに斬新すぎて、最初に入ったとき、どうやって使ったらいいかわかんなかったもんなあ。

最近、プロジェクトのつながりで出席する会や、打ち合わせで本を頂くことが多く、仕事と合わせて勉強もできる。有難いことです。


私と斎藤会長が協働しているお米を使った新しい素材→米ゲル「ライスジュレ」プロジェクトについて。茨城県河内町の地方活性化のプロジェクトです。

ライスジュレ(米ゲル)プロジェクト

米ゲル生産工場について。畜20年以上たった給食センターを工場にリノベーションしました。

ライステクノロジーかわち米ゲル工場

海外の建築家によるデザインされた建築案件といえば「The Wall」われらがデザインパートナーの鈴木晶久が参加した東京の記念碑のひとつです。

The Wall

最後に、イル・パラッツオについても、blogで書きました。外国人建築家による「ランドマークとしての建築」論です。

ホテル・イル・パラッツオ/アルド・ロッシ/都市の建築

書評「住宅が資産になる日」

住宅が資産になる日」村林正次 著 プラチナ出版

7月20金曜日の夜、私が以前から親しくさせて頂き、プロジェクトも協働したことがある村林正次さんが、株式会社価値総合研究所を退職され、新たに「社団法人 不動産総合戦略協会」を設立され、そこの理事長になられたということで、その発足パーティーがあり、お邪魔してきました。


発足パーティーの様子。会のあった「LIFORK大手町」は、大手町ファーストスクエア一階にあるコミュニケーションスペース、新しいワークスペースのひとつ。


会には関係者の方も多く集まっておられて、村林理事長他のプレゼンテーションもあり、盛大でした。びっくりしたのは前から聞いてはいたのですが、この会に村林さんが執筆された「住宅が資産になる日」の出版が間に合っていたこと。聞けば当日の朝に届いたとのこと。

タイトルだけでも非常に共感する部分があり、早速拝読させて頂きましたが、ありそうであまりなかった、住宅の不動産としての価値について、本質から述べた本になっています。

日本の住宅の問題は、戦災による住宅不足の解消から全ては始まっています。早急に住宅を国民に供給しなければならないために、持ち家政策や、住宅公団等による公営住宅の供給など、様々な政策がとられましたが、住宅の供給が1960年代に解消してもなお、その政策は続けられ、抜本的な変化がみられないまま今に至っています。

現在、全国で流通している木造住宅は、不動産の評価として築後25年で資産としての価値がゼロになります。皆様が必死になって組んだ住宅ローンが、資産として手元に残りません。これでは、老後の住み替えや、子世代に住宅を渡すこともままなりません。その結果のひとつとして、空き家の大量発生という問題が全国的な課題となっているのは、周知の通りです。

これら多くの課題をもつ住宅問題に、住宅の歴史的な流れも踏まえながら(このあたりご出身の早稲田大学建築学科戸沼研究室の流れもあるのでしょうか)、不動産コンサルタントとして包括的な分析が書かれています。また、国内の良い事例や、海外の不動産の考え方等など紹介しながら、今後に向けた提案やヒントが書かれています。住宅や不動産に興味のある方、ぜひご一読を。


「社団法人 不動産総合戦略協会」は、これらの問題に向けて少しでも解決になるような提案をしていきたい、とのことでした。私たちが進めている高断熱住宅RCZシステムも、住宅の不動産価値を大きく上げ、ストックとして生かせるような目的に向けて展開しています。そんな中で、村林さんとはいくつかのプロジェクトを進めており、時期がきたらここでもご紹介出来ると考えています。


「子ども世代に渡せるRCの家づくり」のページに、「ストックとしての住宅」というコラムを書いています。「住宅が資産になる日」の内容にも近い部分があります。ご参考まで。

ストックとしての住宅

空襲後の東京、戦後の住宅不足の解消から日本の戦後住宅政策は始まった。