さる先日、日本計装技研藤枝会長のご縁もあり、日本の外断熱の第一人者である田中辰明先生のご自宅にお伺いしてきました。田中先生は、今は退官されていますがお茶の水女子大学で長く教鞭を取られており、環境工学の権威です。特に日本に外断熱を広める努力をなされ、一般社団法人 日本断熱住宅技術協会の理事長であります。ご自宅に訪問したのは、断熱についてお教えを伺う他、築37年経つ、日本でも最初期の外断熱住宅をこの目で確認したかったこともありました。
躯体はRC造3階建て。外観を見たところ、築37年というのに、塗装は少しも傷んでいない様子です。塗り替えは何回おやりになりましたかと質問したところ、たった一回ですというお話、当時は、まだ日本に外断熱の技術をもった会社が殆どなく、材料はドイツから輸入されたということでした。断熱層の厚さは30ミリ、これでも当時は大変なことだったそうです。また、建築計画的にも、吹き抜けを利用したソーラーパッシブを利用し、RC躯体蓄熱や、夏の換気に利用しているとのこと、スキップフロアの階段もみせていただき、日本最初期の外断熱エコ住宅を体験できました。
お話を伺う中で、初期の外断熱導入の苦労、とくに耐火性能確保との戦いや、周囲の無理解など、導入までの長い道のりのお話を聞き、今では外断熱は良いという常識になるまで、長い年月がかかっていたのを理解できました。
健康と建築との関係について、近年調査が進み、当事務所でも高齢者住宅を中心にそれについての相談もあり、今後研究を進めていくのに対し、大きな知見を得ることができました。今後ともいろいろご指導願う予定です。
一方で、田中先生は、ドイツ留学されていたということもあり、プルーノ タウトの研究家で、それについての著書もあります。私の卒論がバウハウスだったということもあって、すっかりその辺の話でも盛り上がり、30年ぶりにハンネス マイヤーという元バウハウスの校長の話になりました。彼の構成主義的な未完のプロジェクト、国際連盟案や学校案が私は好きだったのです。
プルーノ タウトの集合住宅も、大改修が行われ、外断熱住宅として生まれ変わっています。欧米とのストックの考え方の違いがわかる話です。日本の建物、特に住宅の断熱性能は欧米に比べて低いので、それを向上させることが、これからの住宅で最も重要な要素になります。このご自宅、子供世代との二世帯住居で、今年の春には改修を予定し、最新鋭の断熱サッシュをドイツから輸入して取り付けるとのこと、良いストックは改修することで性能を維持向上させ、長持ちし、結果的には大変安くなるということです。
昼過ぎにお伺いし、家を出たのはすっかり暗くなってからでした。お世辞になりました。今度は建物の写真をちゃんと撮らせて下さい。

木質系の外断熱材の見本。結露を考慮し、外部と呼吸し、水分が抜けるようになっている。