隅田公園にて、、、

打ち合わせの帰りに隅田公園に寄った。錦糸公園などと並び、ここも関東大震災の復興計画の中で、後藤新平の計画した公園のひとつ。700本の桜は8代将軍吉宗公の植えたものがルーツとなっており、川を活かした親水公園は江戸から東京へ引き継がれた。公園上を通る首都高速は、この時代に整備された隅田川の緑のネットワークがなければ成立しなかった。パリやロンドンをモデルとした親水公園が、都市のバッファーゾーンとして、新しい交通システムのためのスペースとして機能したのである。さて、今度のオリンピックに向けて、東京の都市計画はどうなっているのかと、今よりはるかに先を見据えていた後藤新平の先見性に思いを馳せながら桜を見る。


完成直後の隅田公園の絵葉書。首都高速がなければどんなに素晴らしい景観か。これから自動運転など交通革命が起こる、その時にもう一度首都高速のあり方を考える時代が来るでしょう。

もうひとつトップライト

二子玉川に建つ、Stream Tamagawaのトップライト


Stream Tamagawa、この商業施設には、建物の中を小径が貫通しており、それに沿って階段が建物に沿って屋根まで登っている。
階段の上にかかるトップライトを壁から離し、奥に向かって広がるようなデザインにした。私の敬愛する建築家、アルヴァロ シザがよくやるような、パースを強調した、人を呼び込む斜線による操作である。隙間の空間をどう魅せるか、写真では映りにくいが、模型を使ってよく検討した。人はどうしたって登ろうとすれば階段を見上げるので、トップライトは人を上へと意識させる有効な装置である。この隙間の空間は半屋内を強調したかったので、仕上げ材は外でも使っているレンガタイルを巻き込んでいる。こちらは半屋外空間で風も抜けることもあり、直射日光はフィルムを貼りカットすることで留めた。屋内空間だったら熱負荷を考慮し、直射日光そのまま入る形とはしなかっただろう。

たまに建物に行ったときに観察していると、階段を登ってくれる人も多く、こちらの意図通りに人が無意識に動いてもらえるのは嬉しいことです。


トップライトからの光がアートを照らしている。竹中工務店時代から手がけてきた自然光の活用による、ミュージアムの設計のノウハウを生かしている。下がり壁にはピンスポット、夜アートを照らす。光の操作で人の行動を喚起する。


こちらはアルヴァロ・シザのポルトの現代美術館エントランス。シザはものの配置が強烈で、少しズラしたりパースを強調するだけで空間を一変させてしまう。実物を観て、このエントランスもすごく意識的な空間操作があって、ちょっとした操作なのにその見え方は他の建物と全く違うという、すごい体験をさせて頂きました。建物のグリッドを少しだけズラして実現したこの空の切り取り方!

田中辰明先生宅ご訪問

さる先日、日本計装技研藤枝会長のご縁もあり、日本の外断熱の第一人者である田中辰明先生のご自宅にお伺いしてきました。田中先生は、今は退官されていますがお茶の水女子大学で長く教鞭を取られており、環境工学の権威です。特に日本に外断熱を広める努力をなされ、一般社団法人 日本断熱住宅技術協会の理事長であります。ご自宅に訪問したのは、断熱についてお教えを伺う他、築37年経つ、日本でも最初期の外断熱住宅をこの目で確認したかったこともありました。

躯体はRC造3階建て。外観を見たところ、築37年というのに、塗装は少しも傷んでいない様子です。塗り替えは何回おやりになりましたかと質問したところ、たった一回ですというお話、当時は、まだ日本に外断熱の技術をもった会社が殆どなく、材料はドイツから輸入されたということでした。断熱層の厚さは30ミリ、これでも当時は大変なことだったそうです。また、建築計画的にも、吹き抜けを利用したソーラーパッシブを利用し、RC躯体蓄熱や、夏の換気に利用しているとのこと、スキップフロアの階段もみせていただき、日本最初期の外断熱エコ住宅を体験できました。

お話を伺う中で、初期の外断熱導入の苦労、とくに耐火性能確保との戦いや、周囲の無理解など、導入までの長い道のりのお話を聞き、今では外断熱は良いという常識になるまで、長い年月がかかっていたのを理解できました。
健康と建築との関係について、近年調査が進み、当事務所でも高齢者住宅を中心にそれについての相談もあり、今後研究を進めていくのに対し、大きな知見を得ることができました。今後ともいろいろご指導願う予定です。

一方で、田中先生は、ドイツ留学されていたということもあり、プルーノ タウトの研究家で、それについての著書もあります。私の卒論がバウハウスだったということもあって、すっかりその辺の話でも盛り上がり、30年ぶりにハンネス マイヤーという元バウハウスの校長の話になりました。彼の構成主義的な未完のプロジェクト、国際連盟案や学校案が私は好きだったのです。
プルーノ タウトの集合住宅も、大改修が行われ、外断熱住宅として生まれ変わっています。欧米とのストックの考え方の違いがわかる話です。日本の建物、特に住宅の断熱性能は欧米に比べて低いので、それを向上させることが、これからの住宅で最も重要な要素になります。このご自宅、子供世代との二世帯住居で、今年の春には改修を予定し、最新鋭の断熱サッシュをドイツから輸入して取り付けるとのこと、良いストックは改修することで性能を維持向上させ、長持ちし、結果的には大変安くなるということです。

昼過ぎにお伺いし、家を出たのはすっかり暗くなってからでした。お世辞になりました。今度は建物の写真をちゃんと撮らせて下さい。


木質系の外断熱材の見本。結露を考慮し、外部と呼吸し、水分が抜けるようになっている。